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短編小説 ゴールデンレトリバーなる犬の正体

ここでは、「短編小説 ゴールデンレトリバーなる犬の正体」 に関する記事を紹介しています。
 わたくしは犬を飼っている。種類は中型あるいは大型とされるゴールデンレトリバーである。

 こやつが、また見た目には頭が良さそう、だの、優しそうだの言われるのであるが、そうではないのである。こやつのずる賢さときたら、そこらの小僧の比ではない。実に綿密に作戦を練って、イタズラやら食い物強奪とやらを引き起こすわけであり、そのくせ、妙に人懐こく、人間に取り入るスベを身につけている。

 今朝もまた、ヤツのお散歩とやらに付き合わされた。行かないとしつこく催促されるわけで、わたくしは休日の朝くらいゆっくりしていたいわけだが、人のベッドにもぐりこんで起こすわけである。それでも飼い主が起きないとわかると、自分で引き綱をくわえてきて、やたらと吠えるのである。

 ここで、ヤカマシイ、とかぶち切れてはヤツの思うつぼである。反応したら、チャンスとばかりに抱き着いてくる。そこでもう負けなのである。

 散歩から帰宅するとメシである。ドッグフードは飲み物である。一飲みにして水で流し込むと、ソファにごろんと転がってサッカー中継とか、テレビを見だすわけだ。実況が「ゴォール!」などと叫ぶとコヤツも、「ワォーン」とかいって興奮したりもするが、大体のうちはソファに寝そべってるうちに寝てしまう。

 ヤツが寝ていようと起きていようと、わたくしだって昼には外出したりするわけで、そうするとヤツは退屈してきてしまいにはイタズラを考案するわけである。この間の事件は次のとおりである。

 わたくしは昼に外出することになり、家を空けた。ほんの数時間である。そして、帰宅し目を疑ったのである。巨大なソファがない。そればかりか、部屋の真ん中に発泡ウレタンの山が一つ存在してるのである。その山は実に巧妙に切りちぎられた大量のソファのかけらである。ヤツは得意気にそれをわたくしに誇示してるのである。

 わたくしは怒る気もなくし、へたりこむのみである。そうしたら、ヤツは妙に神妙な顔をして、悪いことでもしたのか、とやっと気づくのである。しかし、反省の時間はそう長くはつづかない。ポジティブシンキングが身についているのか、立ち直りも早く、夕方には気づかぬうちに一番風呂につかってる有様である。

 この犬種は妙に人間くさく、わたくしは一度、本当にどこかにジッパーがついているのではないかと猜疑さいぎをいだき、ヤツをひっくり返して捜索したわけである。

 嫌がるヤツを仰向けにしたままわたくしは長い毛をかきわけた。しかして、ジッパーは存在した。わたくしはやっぱりか、と思った。思い切りジッパーをあけてやるぞ、と意気込み、その線をまさぐるとそれは子犬のころに実施した、虚勢手術の痕であった。

 だが、ジッパーがなかったとして、コヤツの内部に誰かが潜んでいるやもしれず、あるいは米国の情報捜査機関の手先かも知れぬ。パソコンのパスワードとか見て、それを中継してはいまいか、などと疑念をいだきつつも、まだヤツと暮らしてるのである。


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