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丹沢山塊放浪記 その9

ここでは、「丹沢山塊放浪記 その9」 に関する記事を紹介しています。
朝、ほの明るくなって三人は起きた。いや、夕べは久しぶりに愉快かつ痛快であった。だが、祭りのあとのように周りの森はしんと静まり返っている。高原の朝、といえば聞こえはいいが、それより気になることがあった。

熟睡していたから気づかなかったが、倒木の本数が増えているような気がする。おかしい。確かに増えていることは間違いなく、目の前のプールに折れて頭を突っ込んでいる木などなかったはずだ。「おかしくねえか、木が何本か倒れてる気がするよ」田口が言った。「気のせいじゃないのか、と俺も最初は思ったんだけど、あんな折れ方してる木はなかったよ」と石田。「もしかして」と言いかけて合田は黙ってしまった。「もしかして、熊が倒していったんじゃないのか」田口が目を見開いて言う。確かにそうかもしれない。細い木ばかりだから、熊が体重をかければ折れそうにも思える。「おい、思い切り鈴ならそうぜ」「そうするか」朝から激しく鈴の音が森に響き渡った。「熊じゃなければいいんだけどな」「それにしたって、寝ていても木が折れる音ぐらい聞こえてもいいじゃないか」「俺たち、酒飲んで熟睡したろ、だからだよ」「もう、やめようぜ、少なくともここに熊は今いない」「そういうことにしよう」三人はとりあえず辺りを見回して安心した。

そのあと、合田が糞をしたい、と言い出した。「してこいよ、あの滝の落ち口でやったら水洗だぜ」「そのつもりです」合田が堂々とその高い滝口に踏ん張って、見事なモノを出しているのを見て、二人はげらげらと下品に笑った。合田のブツは滝つぼに粉砕されて見事に砕け散った。合田は素っ裸になってついでにプールで体を清めた。残りの二人は山に行くと通じが悪くなるのと合田ほどの度胸はなかったので、しなかった。そして出発することにした。目標は少なくとも畔ガ丸だ。撤収も早々に済ませ、出発した。朝六時前であった。

果たして相変わらず道は悪い。ほぼ、東海自然歩道は消えた。感と地図とコンパスを頼りに三人はヤブの中を歩いた。やがて、ヤブが開けてきて、丸い山頂が見えた。「これ、そうじゃないかな」と田口。「いや、ヘンだぜ、だってあんな山の形で立派な名前の付く山なんてないよ」確かに、坊さんの頭のような丸い山頂だ。山頂についてみて、どうやら違うらしい、という結論になった。

「おい、合田、お前何踏んでるんだよ」田口がウイスキーを飲みながら言った。「何って、何も」「踏んでるだろ、そこどけ」合田が仕方なく半歩前進する。「やっぱりだ、これ標識だよ、三角点だか水準点だかわからないが、地形と地図の三角点の位置がぴったりだ、ここは西丸というピークだよ。それであっちに見えるのが畔ガ丸」やっと田口が答えを導き出した。それから、三人はまたたいそう苦労して畔が丸に登頂した。あまり景色は良くなく、近くに避難小屋があると書いてあるので、そこに泊まることにした。少し降りたところに避難小屋と、山にしてはずいぶんと立派なトイレが三室もあった。泊まるのは悪くない。落ち着いて排便できる場所を見つけたので、石田と田口は二人してゆっくりとトイレを堪能した。

平らだし、ツェルトを張るのも、料理も楽だ。疲れていたので簡単な料理にして、生ぬるいビールを飲んで早々に寝た。

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