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丹沢山塊放浪記 その10

ここでは、「丹沢山塊放浪記 その10」 に関する記事を紹介しています。
次の朝は早めに三人とも起きた。最終予定日だから、飛ばすぞ、というわけだ。携帯食をくわえながら、着替え、そのまま登山道を走る。ここから先はほぼ平坦で、下り気味になる。ものすごいペースになるはずだ。山を走るというのは本来は危険で、あまりしない方がいいが、尾根道もちゃんと見え、なだらかで石ころも少ないので三人は走った。

とにかくも風が気持ちいい。走りながら、熊もいないのに合田が歌う。「おーれーたちーはさんがくせんしだ、せんしだー」なんか他の二人にはわからない歌だが、ペースがどんどん上がる。景色も良くなってきて、周囲のヤブもあまりない。菰釣山まで二時間くらいではなかっただろうか。菰釣山、一応歴史的に戦国時代に菰をなんだかの役目のために釣ったことから来ているそうで、写真だけはとり、それからまた走る。

景色はどんどん変わり、富士山もきれいに見えるようになってきた。先頭の石田がペースを上げていくのでみんなもそれに付いていく。あるカーブをまがったところで、「おお」と田口が声をあげた。山中湖が見えたのだ。「さあもう少しだ」石田は相変わらずのペースで走り続ける。昼過ぎには最終目的地である高指山に到着した。高指山までが今回の山行だが、さらに山は連なっており、草原が広がる富士山形の山に続いている。降り口は、そちらには向かわず、山中湖方面である。みんな、感慨にひたり、歩きながら談笑した。歩いているうちについに平地になり、そして舗装道路になった。

腹がへったので三人でラーメン屋にいった。「なんかさ、こう、不味いって言っちゃあわるいけどさ」と田口が言いはじめた。「そうなんだよな、山で食ってるものなんてろくでもないはずなのにさ、旨いって思うよな」「味気ないってやつじゃないですかね」と合田も言う。そんな物、かもしれない。そそくさと店を出た。

外はまったくの観光地だ。「なんかさあ、俺たち、やたら場違いじゃないかな」石田が言う。「そうだなあ、こんなにテニスコート作ってまるで軽井沢かよ」と田口。「これさあ、バスとか電車に乗ったら絶対に避けられるよな」「その方がいいだろ座れるぜ」。いかにも場違いで小汚い三人組は、ファッショナブルな衣装でテニスをする青年たちを見ながら、バス亭でバスを待った。「今回の山、結構面白かったぜ、低いけど」「そうだな、南アルプスよりいいかもしれない」石田と田口は話した。合田は、実家に帰るというので別なバスに乗って先に帰っていった。手を振る二人に合田はずうっと手を振り返して、また会う日までさようならをした。



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