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短編小説 空沼岳 北海道の春 その3

ここでは、「短編小説 空沼岳 北海道の春 その3」 に関する記事を紹介しています。
私はまずかったか、と道端に残る雪と大きくなりつつはあるが、まだ原型を留めているフキノトウを見ながらそう思った。「三田村さあ、ちゃんと雨具はもってきたよなあ」「当たり前だろ、君が持ってこいと何回も言うから」「ああ、それさ、今のうちに来た方がいい」「なんでさ」「そのうち分かるから。俺も着る」私たちは雨具を取り出して、着用した。なぜ、着ろ、といったかといえば、思ったより寒そうだ、というのと、樹上から溶けた雪が雨のように降ってくるとわかったからである。ほかにも水をかぶりそうな箇所がある。三田村、悪い、今回はちょっと時期が早かったみたいだ。

私と三田村は登山口の小さな橋を渡り、登挙を始めた。春の日差しが眩しい。眩しいのは日差しばかりではなく、点々と、というよりはかなり土と雪とが半々で構成される地面からの反射のためでもあった。「三田村さあ、替え靴下もってきたよなあ」「ああ、持ってきたよ。それだって、君が言うから」「そうだっけ、俺昨日、君んちでかなり飲んでたから」「あんなに飲まれるとは思わなかったよ。せっかくフロム・ザ・バレル買ったのに空にしやがって」「空だったか、悪かったよ、金なくてさ、飲んでないんだもの」そんなに飲んでたのか、まあ、いい、今日はこいつを連れてきてやったということで。息の切れる急坂が始まるとともに、道を雪解け水が流れだしてきた。たちまち二人の靴はびしょ濡れになった。

札幌市には真駒内という地区があり、それなりに発展している。その真駒内に流れ込む真駒内川の上流が私達が歩いている道のそばを流れていく。もっとも支流の一つだ。これだけ水源を抱えていれば数多くの支流を持つ。空沼岳は水の豊富な山でブナやニレが豊富に生えている。生物も多様で、リスが非常に多い。もっとも臆病なエゾリスは見かけない。図々しいシマリスは人によくなつくので多く会うことができるが。水源はこの雪解け水、というわけだ。

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