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ショート小説しゃぶしゃぶ太宰

ここでは、「ショート小説しゃぶしゃぶ太宰」 に関する記事を紹介しています。
しゃぶしゃぶ、そのころあったのかは知りませんけれども。

STAGE I
自他ともに認めるところ、私は健啖家、であることになっているらしい、うまいものは食わねばならぬ。腹も減ったので安吾と広小路の牛(ぎゅう)でも食いに行こうということになった。中也は誘わなかった。

STAGE II
だが、あの牛がどうしても見つからぬ。牛といえば、田舎者の大事にするものだ。かわりにしゃぶしゃぶなる店があった。私は思う、牛は牛だ、牛にちがいはあるまい。店に入ったが、食い方がわからぬ。東京者はよく自慢をするが、自分は田舎者であることに違いはない。だが、私はおもう、こんな食い方があっていいものかと。

STAGE III
牛なるもの、おいしいところは油と決まっている。わざわざとまた、それを湯で落として食うのだ。しかもお醤油味ときた。ここは味噌だろう、と私は思った。料理人たるもの、客には「おいしいところ」だけを出してこころづかいをするものだ。だが、違う。ここは自分で、わざわざ油を落としてくうのだ。

STAGE IV
ああ、いやだ、客任せのしかもおいしいところを除いて食うなんぞ、聖書の奴隷にさえ出てこない。ところがだ、こいつがウイスキーに合う。油がないからだろうか。さんざんに食って散財した。

STAGE V
もう脂たくさんの牛などいらぬ。あのような脂には、なにか人を麻痺させるものがはいっているに違いない。それ以来、私はわざわざ油を落として牛をくう。

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